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LivingAnywhere Commonsでテレワークをしながら、色んな場所を旅してみる。〜美馬編(1)〜

高速バス「脇町」バス停を降りたのが日曜日の午後8時半。その日は新月で、里山に囲まれた田園風景の中にぽつんと置き忘れられたように佇んでいる脇町バス停のあたりには街灯すらなく、高速道路の照明灯がかろうじてあたりを照らしてはくれているものの、徐々にその明かりも届かなくなり、辺りは真っ暗になりました。

街灯の明かりに代わって、暗い夜道のその先には、新月の夜空に広がる満天の星空がひろがっています。

なだらかな坂を登り、そこから吉野川の堤防付近まで一気に下るアップダウンの激しい道を、坂の上に広がる星空に向かうようにして登っていきながら、僕は次の目的地であるLAC美馬に向かいます。

うだつの町並み

茶里庵(さりあん)外観

「うだつの町並み」で有名な脇町は吉野川中流域、美馬郡の北岸にあって、吉野川の水運と、この地方でよく採れた藍を使った染物業で栄えた町です。この町に軒を連ねる旧家のお屋敷は、火事の際、隣家からの延焼を防ぐ設備であった「うだつ」を競ってその家屋に上げていたといいます。「うだつ」を上げるためには相当な費用が必要だったことから、いつしかそれは富と繁栄を象徴する、装飾的な意味合いを付与されるようになりました。

「出世できない」「暮らし向きが良くならない」ことを「うだつがあがらない」と言ったりしますが、その語源は実に、この「うだつの町並み」に軒を連ねる豪商たちの家屋に取り付けられている防火設備が語源になっている、と言います。

星空に向かって丘を越えたあと、今度は吉野川に流れ込む東俣谷川に沿って南へと谷筋を下っていきます。坂の勾配がやがて緩やかになり、辺りは平坦な土地へと変わっていきます。そしてやがて、街の明かりが徐々にあたりを照らし始めるようになり、僕は目的地である「うだつの町並み」が近いことを知ります。

この「うだつの町並み」のど真ん中に、これから2週間お世話になる「のどけや」というゲストハウスはありました。「うだつの町並み」はまごうことなき観光スポットですが、その観光スポットへの「アクセスが至便」なのではなく、この「のどけや」自体が、うだつの町並みそのものとして、オレンジ色の街灯で照らされた町並みの一角に佇んでいたのでした。

のどけや

と言ってもそれは「別館」のほうで、僕が宿泊予定だった「本館」は、そこから通りを一本北側に入った、いわば裏通りに面していました。この通りもかつてはお座敷や料亭が軒を連ね、夜な夜な宴会額広げられていたと言いますが、「のどけや本館」は、その通りに位置する旅館を改装してゲストハウスにしたものです。

到着したのは午後9時過ぎで、本館入ってすぐの広いリビングは、おそらく玄関口の空間と、大広間をつないでできた広大な空間で、なにかの時代映画の考証になりそうなレトロで趣のあるその空間では、大勢の宿泊客がめいめいがワイングラスを片手に談笑していました。

のどけや本館(宿泊施設)ロビー

その宴会が行われていた大広間を抜け、建物をまっすぐ奥まで進んだ突き当りが僕にあてがわれた個室だったのですが、うっかりしていると迷ってしまいそうになるくらい、広くて入り組んだその建物内部に、これまで僕が生活してきたどのLAC拠点にもなかった「人が生活している」ぬくもりのようなものを感じたのでした。

誰か見知らぬ人がどこかからやってきて、そしてどこかへ立ち去っていく、宿というのはその中継地点として機能を果たします。そこで生じる思いもかけなかったような出会いは旅することの大きな醍醐味の一つであるのですが、この「のどけや」には、そんなアットランダムな人の動きが醸し出すようなセレンディピティはないか、あってもとても希薄でした。

その代わりに、ここ「のどけや」には、この場所にしっかりと根を下ろして生活している人たちの居場所があり、コミュニティがありました。ここでの生活はたった2週間程度でしたが、まるで映画のセットにでもなってしまいそうなこの建物とこの空間は、文字通り、ここに出入りする人たちの生活の舞台で、その舞台の袖の方で、彼らの生活を眺めながらなんとなく生活をともにしている感覚が、独り身の僕にはある意味でとても心地よく感じられたのでした。

働く場所としての「のどけや」

こののどけやの一階の入口付近の大広間が、ぼくのこれから一週間のワークスペースになります。が、ここオーナーご夫妻のお子さんのおもちゃが置かれていたり、以前飲食店であった時代の名残のような、焼酎や日本酒の瓶などが所狭しと並べられているこの空間は、一見するとオフィスと言うか、仕事をするべき空間とはいい難いものがあります。

事実僕は、Zoomの画面を立ち上げた際に映る背景が、他のメンバーから見てあまりにかけ離れすぎていない位置を探すのに30分以上の時間を費やしてしまいました。「ここで仕事ができるのかな?」中庭に面した、とりあえずはZoomの背景として不適切ではないと思われたその空間は、実は少し長めのちゃぶ台に座布団を敷いて座る場所で、僕は生まれてはじめて、「床に座って仕事をする」という経験をしました。

のどけや本館(宿泊施設)仕事場

もと旅館であったというのどけやの建物や内装の佇まい、それから床に座るということ。そういう諸々が、「オフィスで仕事をする」ということが当たり前になっている現代人である僕の既成概念を変えていくのに、そんなに長い時間はかかりませんでした。

程なく、僕は自分の役割である作業に没入するようになりました。ここにはLAC会津磐梯やLAC八ヶ岳のような大自然もありはしません。LAC下田のような活発な交流もなければ、いわゆるオフィスワークに最適化されたような近代的な設備もない。

それでも、日本で生まれ育った人間であれば必ず感じるであろうこの家屋が持つ温もりや暖かさのような、外形的に数値化できないような「雰囲気」が心地よく、僕の集中力を高めていってくれます。木のぬくもりや、中庭の趣や、外光を柔らかに取り入れる日本家屋の造りといったハード面もさることながら、ここに住まい、ここを拠点にして、この町で活動する人たちが持つホスピタリティが、この空間に得も言われない心地よさを与えているのかも知れません。

そんなのどけやの中心的存在であるコミュニティマネージャーであるここのオーナー、柴田さんご夫妻にはお世話になりました。多忙なご主人に代わって、僕の些細な疑問やニーズに的確にお応えくださったのが奥さんで、そのホスピタリティには本当に頭が下がりました。おそらく、この町の魅力以上に、このご夫妻の人柄に引き寄せられて、この場所に人が集まってくるのかも知れない、そんなふうにも感じました。

柴田さんご夫妻を中心にした、緩やかな拡大家族。それがここLAC美馬の、のどけやの特徴を端的に表す言葉だと思っています。そのことが、この場所を他の拠点とは一味違ったものにしているのかも知れません。

うだつの町並みの、個性的なお店たち

PUNTA外観

これまでの拠点と違って、ここLAC美馬は、まさに観光地である町のど真ん中に位置しています。

「中心地まで、徒歩◯分」とかそういうのではなく、この宿泊施設がまさに中心地に位置しているというわけです。

日中は、のどけやを拠点にして近隣のお店に働きに行く人が多いことから、宿の中は閑散としています。そんなわけで、仕事が早めに終わったあと、僕は毎日町歩きを楽しみました。

こちらのお店は、この地方の郷土料理である「蕎麦米雑炊」という、お餅が入った蕎麦の実の雑炊を食べさせてくれるお店です。外から見ると赤いテーブルクロスが敷かれた大きなテーブルが土間に置かれた古民家で、いつもたくさんの観光客で賑わっていました。お昼休憩にちょくちょくお邪魔して、優しい味のする蕎麦雑炊を頂いていました。

茶里庵(さりあん)蕎麦米雑炊

うだつの町並みの東の端の方にあるその名も「うだつあがる」という古民家カフェは、ナスを使った雑穀米のロールケーキだとか、オーガニック食材で作ったドリアだとか、いわゆる女性向けのメニューを取り揃えて営業しています。

こちらのカフェ、僕はずっと一人で入ることを憚っていたんですが、偶然にも、セブでお会いした方で、ここ徳島県にお住まいという女性が、僕がこの街に滞在をしていることを知ってお休みの日に妹さんと訪ねてきてくださり、念願のこのお店で、セブ島での思い出話に花を咲かせることができました。

うだつ上がる(カフェ)

一つの所にずっと留まっていると経験できない邂逅や再会。このご時世ですが、移動する人は移動して、いろんな事を経験しています。感染症対策も万全で、行動には細心の注意をはらいながら過ごされています。そういう方と外でお会いするほうがかえって安全なのかも知れないと、そんな事を思ったりもします。

次の日は、この界隈の人気店であるイタリアンレストランにランチを食べに行きました。このご時世ですので、席と席との間隔は広く、入場制限も一部かかっているようでした。少し強気の値段設定のお店ですが、外から見ても大いに賑わっていることが分かります。

PUNTA中庭

ここのイタリアンがおすすめであることは柴田さんの奥さんから伺っていたので、ぜひとも滞在中に一度試してみたかったんです。この地域の家々の特徴なんでしょうか、のどけやと同じく特徴的な中庭が上品に配置された極上の空間でいただくランチは、やはりとても上品な味がしました。

PUNTAモッツァレラチーズと揚げナスのトマトパスタ

他のお店と同じように、少しおしゃべり好きなシェフの方とカウンター越しに一通り色んなお話をさせていただいたあと、腹ごなしに近くを流れる吉野川の堤防を歩きながら、もうすっかり秋になってしまった季節を味わうように、柔らかな風に吹かれながら、川の流れをいつまでも眺める、そんな極上の休日を過ごすことができました。

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