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LivingAnywhere Commonsでテレワークをしながら、色んな場所を旅してみる。〜八ヶ岳編(3)〜

ヤギのニーナ

LivingAnywhere Commons八ヶ岳での生活も3週目を迎え、毎日とはいかないまでも、ここのコミュニティマネージャーであるジョニーさんと夕食をともにしたりするようになり、ちょっとした用事を頼まれることも多くなりました。オープン当初はあんなにたくさんいた宿泊者も、この頃にはめっきり少なくなって、僕一人ということも多くなってきます。

僕の滞在中、ジョニーさんは出張等で出かける機会が多く、奥さんもご自身のお仕事があることから、日中はこの広大な施設の中で一人で仕事をする機会も多くなっていきました。当然「お留守番」を頼まれることも増え、来客があった際のちょっとした対応などもさせていただいていました。

そんな中で、僕のお気に入りの「頼まれごと」の一つが「ヤギのニーナのお散歩」でした。

ニーナは人間の年齢に換算すると10代の、ちょっとおてんばな感じもするおんなの子のヤギで、食べざかりなのかはたまたそういうものなのか、一日中草をはみつづけている、LAC八ヶ岳の看板娘です。

建物の前の広大なオートキャンプ場には雑草が茂っている場所がたくさんあるのですが、そこの草を食べてくれるのがこのヤギのニーナというわけです。

ニーナは普段は自分の小屋の近くのポールに鎖で繋がれています。その小屋の周囲の草は今はほとんど食べつくされて、時々移動させてあげないと、お腹をすかせてずっと鳴いているんです。

ジョニーさんが在宅の時は、ご自身の愛車を適当に草の茂ったエリア付近に駐めて、上の写真のようにリヤバンパーのフックにニーナちゃんのリードをつないで、適当にその辺の草をはませてあげているわけですが、車に乗って出かけてしまわれたときには小屋のあたりで所在なく寂しそうにしている姿を見かけることもありました。

そういう時、僕はニーナちゃんのリードをもって、広大なオートキャンプ場を歩き回っていました。嬉しそうに草をはむニーナちゃんをみていると、なんだかとても幸せな気持ちがして、全く苦にならない頼まれごとだったんです。

この歳になって、山梨県の山の中でヤギを散歩させることになるなんて、人生って本当に何が起こるかわからないものです。

何もない場所で、生活を楽しむ

この週から僕は時短勤務を認めてもらっていて、午後の比較的早い時間に仕事を終えて、夕食までの間を、自由な時間として使うことができるようになっていました。

クマこそ出ないものの、周囲に森と田んぼと山しかない、という環境はLAC会津磐梯とよく似ていて、就寝までの間、ご飯を食べる以外には基本的にすることはありません。もっとも近いスーパーマーケットが徒歩30分の所にありますので、会津磐梯よりは若干、生活の利便は良いと言えるでしょう。

そんなわけで、僕は夕食までの午後の時間を、雄大な山々を眺めながらその片道30分のスーパーマーケットまで歩く散歩の時間に当てることにしました。ただ歩くだけだともったいないので、イヤホンを付けて、趣味の英語を聞いたり、英単語を学習したりする時間も兼ねたものとします。

コロナ禍で帰国を余儀なくされるまでの約2年半、僕はセブ島でフィリピン人の英語講師と仕事をしていました。日本に帰ってきてからはあまり英語を使う機会がなかったので、自分の英語力の衰えを感じていたところだったんです。

そして何より、僕は英語が大好きです。だから空いた時間を使って、友人が運営しているオンライン英会話スクールのカリキュラム作成のお手伝いをしたり、好きな洋書を読んだりする、そういう時間にあてました。

LACの各拠点を転々とさせていただく生活を通じて、僕は自分のオフの時間の充実していることが、仕事に大変な好影響を与えるということを実体験として理解する事ができました。そしてここLAC八ヶ岳において、僕の「ワークライフバランス」は、最高潮に達したと思っています。

周囲に百名山以外にはこれといって僕の興味をそそる場所がないからこそ、自分が好きなことに時間を使いたい。有り余っている時間で、自分のスキルを磨いたり、趣味の時間に費やすことで生活の質を高めることができる。そうすることで、自分が従事している労働や生産活動におけるパフォーマンスが高まっていくという好循環が生まれます。

プライベートの質が仕事の質を高め、それがプライベートに好影響を与えるという相互作用のことは、少し考えればみんな誰でも理解することができます。でも私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、一日の時間の大半を「働くこと」と、それに付随する行為、例えば通勤などに当てざるを得ない環境の中で生きています。少なくとも、僕に関していえばそうでした。

それが日本に帰ってきて、こうやって「職」と「住」が近接するような働き方を実践させていただき、より自由に使えるようになった時間で、自分自身のパフォーマンスを上げることができるようになってきた。

今後、こんなふうに一人ひとりにパーソナライズされた働き方の選択肢が増えることによって、より一人ひとりがいきいきと活躍できる社会が到来するのかも知れない。そんな事を考えながら、八ヶ岳が美しく見える田んぼの中を、毎日英語を聞きながら歩いていました。

森の中のアイリッシュパブ

繰り返しになりますが、LAC八ヶ岳は本当になにもない場所にあります。

ただ、そんな中にあって一件だけ、ずっと気になっていた存在が、徒歩数分のところにあるという「アイリッシュパブ」でした。

ここの拠点を訪れる前から、ここに来る予定であるということを伝えた時にほとんどすべての人から聞いたのが「絶対に近くのアイリッシュパブに行ったほうが良い」ということでした。ここのスタウトビールは絶品で、本場の人も唸るようなクオリティだと言います。

アイリッシュパブは、イギリスのいわゆる大衆酒場のような場所です。本場はもちろんアイルランドですが、こういうパブでフィッシュ・アンド・チップスをつまみにスタウトビールを飲みながら、プレミアリーグサッカーを観戦するという習慣はイギリスの代表的な文化の一つでもあるといいます。

僕も世界を旅していた際、友人を訪ねていったアイルランドで、このアイリッシュパブを経験しました。そしてあんまり気に入ったので、滞在中はほとんど毎日特定のパブに入り浸って、友人や、そのあたりにいた欧米人とよくおしゃべりをしたものでした。

そんな懐かしい思い出と、あのときのんだスタウトの味がなんとなく思い出されて、だからずっと楽しみにしていたんです。

そのパブは森の中に、本当に静かに佇んでいて本場のアイリッシュパブの喧騒には程遠い、静かで落ち着いた雰囲気を漂わせていました。木製のドアを開けて入ると、常連客と思しき淑女がカウンターに座って、店主と思しき男性とおしゃべりに興じています。

モニターにはサッカーの代わりにプロ野球の生中継が放映されていましたが、そこで供されたスタウトの生ビールは、ある意味では本場のそれよりも遥かにクオリティの高いものでした。

本当は、本場のパブでそうしたように、カウンター越しに店主の方とお話をしてみたかったのですが、その淑女が熱心におしゃべりをしている様子を見て、そこに割って入ることは控え、代わりに静かに読書をしていました。

ベルベットのような泡のスタウトビールもさることながら、おつまみに注文したフィッシュ・アンド・チップスの味は、これもやはり本場のそれと遜色ないもので、本場のそれが持つ無骨さがいい意味で日本人向けにソフィスティケートされていて、僕はこちらのほうが好みです。

森の中の素敵なアイリッシュパブとの出会い。思いがけないラッキーがあったのも、いい思い出の一つになっています。

出発

ここを初めて訪れた日も雨でしたが、出発の日もまた雨でした。ここを出て、次は四国、徳島県のLAC美馬拠点に向かいます。タクシーを待つ間、お気に入りのリビングで、好きな本を読みながら雨の音を聞いていました。

朝早い出発であったにもかかわらず、ジョニーさんが見送りに起きてきてくださいました。僕が視界から完全に消えてしまうまで、つまり僕の載っているタクシーからジョニーさんの姿が完全に見えなくなってしまうまで、雨の中、ジョニーさんはずっと手を振って見送ってくれたのでした。

このLAC八ヶ岳で、僕は何人かの「星の下の自由人たち」と焚き火を囲みながらお酒を飲み、何人かのLAC関係者の方と宇宙ビールで乾杯した以外、基本的には一人で過ごしていました。

毎日星空を見上げて、小川のせせらぎを聴きながら、ヤギのニーナと一緒に八ヶ岳の空気を一杯に吸い込んで、美しい山々に抱かれて、仕事以外に基本的には何もしない毎日を過ごしました。

仕事以外にすることがない。

そのことに全くネガティブなコノテーション(含意)がないくらい、ここでの空白のような日々はとても満たされたものになりました。満たされた空白。なんだか形容矛盾なようですが、それ以外の言葉が見つからないくらい、ここでの生活で「何もしないことの贅沢」を経験することができたように思っています。

もしいつかまた、自分に空白の時間ができたなら。星空の美しい、空気の澄んだ環境で、気の合う仲間と美味しいクラフトビールを飲みながら、満天の星空を見上げて語り合えるような場所でもう一度過ごしてみたい。

小淵沢の駅に向かうタクシーの中で、ぼんやりとそんな事を考えながら、窓の外の雨を眺めていました。

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